さよならはまたあとで

ふと、そこで手をあわせる人が目に入る。

夏の日差しに照らされる茶髪の髪がふわふわと風に揺れている。


「渡井くん?」


その人物はぱっとこちらを振り返る。
そして顔をしわくちゃにして笑う。


「優恵だぁぁ」


嬉しそうに手招きをする明良の隣に私もしゃがみ込んだ。


「渡井くんも、お祝いに来たの?」


持ってきた紙コップにいちごミルクを注ぎながら私は聞いた。


「んぁ」


彼は曖昧な返事をして、


「これからの俺のことを相談してたんだぁ」


と飾られた燈太の写真を指でつついた。

私はプレゼントで買ったぬいぐるみを彼の前に飾った。

それから箱からケーキを出すと、明良は「おいしそう」と顔を綻ばせる。


「燈太のだからね」


「知ってまぁーす」


私はいちごミルクを注いだコップを明良にも渡した。
燈太の前にも置いて、三人でコップを合わせた。


「おめでとう、燈太」


一口、いちごミルクを飲む。
燈太の好きな味だ。
じわりと目元が熱くなった。
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