さよならはまたあとで
今日は律太、誰と帰ったんだろう。
いつもの公園でぼんやりと夕焼け空を眺めながら考える。
渚とも七瀬ともばいばいして、私はひとりぼっちになった。
そのまま家に帰る気もなく、自動販売機で暖かいココアを買って、公園のブランコに座り込んではぼーっと空を見上げていた。
カラスが戯れ合いながらどこかへ飛んでいく。
高層ビルでよく見えない、東の地平線のあたりからこみ上げてくる闇。
ぽつりぽつりと現れ始める星たち。
9月の夕暮れは夏休みのそれとたいして何も変わらない。
これから10月頃にかけて、だんだん日が短くななっていくんだろうなぁ。
ココアの缶のパルプを押し上げて、私は両手で包み込んだ。
今日は一言も話せなかった。
二年生になってから、いつも一緒にいたのに。
今日はご飯も渚と七瀬とだったから、本当に何も話してない。
目さえ合わせていないかもしれない。
誘ってくれた時、素直に喜んで行けばよかったのかな。
でも、それじゃまた律太に無理させちゃうし…
あの子にもきっと失礼だ。
考えても考えても、結局は振り出しに戻る。
明良のことを好きにならなくちゃいけないのに、それでもやっぱり律太との微妙な距離感が気になってしまって振り切れない。
答えが出ないまま、1ヶ月が経った。
公園の木々も緑から茶色や赤に衣替えして、見える景色もガラリと変わった。
変わらないのは律太との距離感だけだ。
いつの間にか、私は帰り道に公園に寄るのが習慣になっていた。
もちろん、付き合うことになった明良とも一緒に帰ることもある。
でも、こうやっている間にひょんなところから律太が現れて、普通に話せるようにならないだろうかと少しだけ期待しているところがあるのも間違いない。