さよならはまたあとで

なんだか朝寂しいなと思ったら、いつもの律太の「おはよう」がなかったことに私は気づいた。

無意識に、私は律太を避けていたし、律太もなんとなく私を避けている様子だった。

そんな雰囲気をいち早く察した葛城は私からいろいろ聞き出そうとしてきたが、そこに居るのも居心地が悪く、私は最終的に渚と七瀬の所へ行き着いた。

二人も初めは私と律太のことを心配していたが、やがて二人は通常モードに切り替わった。
私は二人の対応がありがたかった。


「そういえば、モデルの話はどうなったの?」


渚と七瀬との帰り道。

どこから摘んできたのか、猫じゃらしを片手に振り回しながら渚は私に聞いた。


「…断ったよ」


渚は私の言葉に驚いたのか、手に持っていた猫じゃらしをポトリと落とす。


「なんで!?」


もったいない!とでも言いたげな目で私を見つめる。


「んとね、もっとみんなといたいから。
そういう仕事をすると、みんなといれる時間も減っちゃうと思って」


しばらく目をぱちくりさせた渚は、そのあとすぐに目に涙を浮かべて私に抱きついてきた。


「ありがとうぅぅぅ、ぐずっなんていい子なのぉぉぉ」


「やだ、泣いてるの?」


私はそんな渚に笑みをこぼす。


「もー、やめなよ。優恵の制服、渚の鼻水だらけになっちゃうよ」


七瀬は私から無理やり渚を引き離すと私を見て嬉しそうに笑った。


「高校を卒業したら、少し挑戦しようと思うの」


改めてそう説明すると、二人は笑って頷いてくれた。
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