さよならはまたあとで

「あきちゃん知ってるの?」


ふと出た言葉。

彼は嬉しそうに顔を綻ばせる。

敢えてそこには突っ込まず、彼は少しふやけた顔で頷く。


「ほら、俺、よく家にもお邪魔してたから。
燈太が亡くなってからも何回か行ったんだ」


そういえば燈太は、私を家まで送ってくれる時、私の家から近いからと言っていた。

明良の後について右へ曲がったり直進したりを繰り返す。


なんだ。全然近くないじゃん。


私の家から燈太の家まではかなりの距離があった。
それなのに、嘘をついてまで私を送ってくれていたのだと思うと、今更だけど暖かくて、涙がこぼれそうになる。

あと少しのところで涙を堪えながら、私は歩き続けた。


「本当は、もっと早く優恵を連れてこようって思ってたんだけど…」


いつの間にか隣を歩く明良は鼻の下を人差し指でちょっぴりこすりながら呟いた。


「私…その頃人避けてたからなぁ」


あの頃は極端だったと、今となっては反省している。
でも、あの時の私は、私なりに精一杯だったんだろうなというのも分かる。


「優恵ちょー怖かった…あ、そこ左」


明良の震えるような仕草に私は笑い、彼の言う方向へ足を進めた。
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