それを愛だというのなら


「そっか。はい、これ」


渡されたビニール袋の中を見る。

中には、おいしそうな生クリームの乗ったプリンが。


「これ……」

「お見舞い。花より美味いものの方がいいかと思って」


優しい声音に、胸がじんと熱くなる。

本当に心配して、来てくれたんだ……。


「ありが……」


お礼を言おうと顔を上げた瞬間、喉が詰まったように声が出なくなった。

健斗の後ろに、見知らぬ女の子が立っていたから。

それも、何歩か後ろじゃない。ほとんどぴったりと背中にくっついているみたい。

歳は自分より少しだけ年下に見える。耳の下で二つに縛った髪。切りそろえた前髪の下の目が、じっとこちらをにらんでいるように見える。

背筋を走る冷たいもので直感した。

この子、もう亡くなってる。

死神くんが夢の中でなくても見えるようになったように、死期が近くなったせいで、この世のものでない人が見えるようになってしまったのか。


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