それを愛だというのなら


「夏期講習、来るよね?」

「うん」


学校が市の施設を借りて開催する夏期講習の日程を、サツキと確認する。


「私は塾があるからパスなんだ」


フミが言うと、ヒトミが「彼氏に会うのが目的じゃないでしょうね」とからかった。

サツキと一緒に笑うと、ヒトミがハッと何かに気づき、急に無口になる。

ああ……私にそんなに気を遣わなくてもいいのに。

みんな、優しいんだから。


「じゃあ、また。たまにはカラオケ行こうね」

「うん。お祭りも行こうよ」

「近くなったら誘ってね」


そんな会話を交わしながら、いつもの道を自転車で通り、いつもの地点でバラバラになっていく。

最後にヒトミと別れ、暑い日差しの下をノロノロと自転車をこいで帰る。

汗が吹き出して、背中にセーラー服が貼りついてしまいそう。

腕が焼けないようにアームカバーなんてしてるから、余計に暑い。

気が遠くなりそうな炎天下ではあはあ言っていたら、背後からバイクのエンジン音が聞こえてきた。


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