それを愛だというのなら
見えないまどかさんに話しかけるように、健斗は落ち着いた声音でゆっくりと話す。
その顔は悲しんでいるようには見えなかった。
輝く思い出を懐かしんでいるように、その目は遠くを見ていた。
「こういうと薄情に聞こえるかもしれないけど。今後どうするかを決めるのは、俺自身だから」
思い出を噛みしめるように、まぶたを閉じる健斗。
その横顔をじっと見ていたら、ふとその目が開いた。
「俺は、たとえ病気が再発してしまっても、瑞穂と一緒にいたい」
こちらを向いた彼と、目があった。
その言葉に、心臓が大きく跳ねる。
「広瀬瑞穂さん。俺と、もう一度つきあってください」
今まで見たことのなかった真剣なまなざしが、胸を貫く。
健斗が冗談を言っているようには、とても見えなかった。
唇が震える。すぐに涙が出そうになる。
「ダメ……」
「どうして」
「だって」
死神くんと決めた健康でいられる期限は、ちょうど終業式まで。
今この瞬間にも、クローン病持ちの私に戻ってしまうかもしれない。