それを愛だというのなら


皆に作り笑顔で『大丈夫』と答えると、やっとみんな昼食に手を付け始めた。

ヒトミは悪い子じゃない。むしろ虐められている子を積極的に助けたりする良い子なのだけど、たまに要らないこと言っちゃうんだよね。

地味なわりに手がかかっている、母が作ってくれた弁当をありがたく咀嚼する。

やがて昼休憩ぎりぎりまでかけて、やっとお弁当が空になったころ、突然腹痛が襲ってきた。


「……トイレに行ってきまーす」

「うん、トイレにいっトイレー」


サツキが明るく手を振る。


「それ、寒いから」


机の片づけをみんなにお願いし、薬の入ったポーチと水の入ったペットボトルを持って教室を出ていく。

トイレで薬を飲んでしばらくこもったけど、腹痛が収まる気配はない。

まるで腸を誰かに雑巾しぼりされているような、何とも言えない感覚が波のように押したり引いたりする。



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