それを愛だというのなら


「……自分の勉強はいいの?」

「うん。大丈夫。見てるから」


見てるからって……やりにくいなあ。

仕方なく授業で使っている問題集を開く。

はあ、出たよ微分積分。

最初の二問目くらいまではいつもできるんだけど、アルファベットだけじゃなくてルートとかカッコが出てくるともう意味がわからない。


「もう止まってる」


水沢くんがぼそりと言う。

う、うるさい!


「う~、う~……」


しかしどれだけ考えても、もともと授業中から理解できていなかったものがわかるはずもなく。

独学じゃ無理だ。塾とか行けば良かったんだろうけど、そんな体力なかったしな~。

何より、消化器系すべてに炎症が起きる私は、おしりにも痔の症状が出ることがあり、痛くて長時間座っているのが辛かった。

乙女だから、そんなこと誰にも言わなかったけど。


「無理。数学は捨てよう」


どうせ受験はできないんだから、数学は捨てて別の教科で頑張ろう。

教科書と問題集を閉じようとした私の手を、水沢くんがそっと握った。

な、なに!?


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