それを愛だというのなら
二階の学習室は、並べられた少人数用の丸いテーブルの半分ほどが既に使われていた。
同じような高校生や、もっと幼い顔をした中学生と思われる人もいる。
空いたテーブルを挟んで座ると、真正面に水沢君の顔が。
「まず、テスト範囲がどこか知らないんだよね」
そんなやる気のない発言をした彼に、苦笑する。
私は文理クラス、彼は意外にも理系クラスなので、微妙に教科も範囲も違う。教えてあげることは不可能。
「瑞穂は何やるの」
「私、月曜の数学がやばいの。文系科目は暗記するだけのことが多いから得意なんだけど、理系科目が苦手で」
数学はXとかYとか、中学の時点でくじけそうだったけど、高校に入ったら余計にわからなくなった。
生物は好きなんだけどね。豆やハエの遺伝の話は面白い。けど、科学はダメ。化学式が覚えられない。
「ふーん」
そういう水沢くんは頬杖をつき、じっと私の教科書やノートをのぞきこむ。