それを愛だというのなら
グラフの線と、y軸のa地点とb地点をつなげて、その間の面積を求めるとか、意味がわからない。
それができたからってなんなの。
……って、数学できない人に限って思うんだろなあ……。
首を横に振ると、水沢くんは椅子を動かし、私の隣に異動した。
「一回しか言わない。よく聞いてて」
そう言い、水沢くんは静かな声音でゆっくりと、どういう解き方をしたらいいかを教えてくれた。
一回しか言わないと言われたので、近すぎる距離や、彼の綺麗な横顔にドキドキする余裕もなかった。
「すごい……どうしてこんなのすらっと解けるの?」
茶髪にピアス。
初めて会った時は授業をサボろうとしていたようだし、こんなに勉強ができる人だなんて思わなかった。
見た目で判断しちゃいけないのはわかってるけど。
「さあ。なんでかわからないけど、数学は得意。授業もさほど苦痛じゃない」
周りに迷惑をかけないよう、彼はいつもより小声でそう言う。