彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)


笑顔で言う彼に、いろいろ言いたいけど言えない私。



「マジで怪我とかしてないか!?怖くなかったか!??」

「・・・ちょっと怖かったかも・・・」



言われて気づくとは、こういうことを言うのだろう。

瑞希お兄ちゃんの顔を見たら、ホッとしたと同時に急に寒気を感じた。



(考えて見れば、知らない車に尾行されて、体当たりされて、飛びそうになったんだもんねー・・・)



普通に生活してたらあり得ない、貴重な体験・・・



〔★危険な体験とも言える★〕



「怖かった・・・・」



素直に感じたことをつぶやいて、ギュッと瑞希お兄ちゃんのシャツの裾をにぎる。

これに瑞希お兄ちゃんは、一瞬目を見開いてからグッと抱きしめてくれた。



「もう怖くねぇーよ、凛。俺がいるからな?」

「瑞希お兄ちゃん・・・」



そう言って私に向けてくれる笑顔で、胸が締め付けられる。

甘えるように、私も抱き付く力を強めたら、頭をナデナデしてくれた。



〔★瑞希の慰めモード、凛の恐怖がなくなった★〕



「やれやれ・・・帰るなり、ブラコンか、お前達?」



ラブラブ(?)する私達に、運転席から顔を出しながら獅子島さんが呆れ気味に言う。

これに、キッと鋭い目つきで瑞希お兄ちゃんが怒る。



「大きなお世話だぞ、伊織!つーか、凛を巻き込まないようにする方法は、なかったのかよ!?」

「俺も被害者だぞ、たわけが。」



瑞希お兄ちゃんの言葉に、いつものポーカーフェイスで言う獅子島さん。



「置き去りにできたからいいようなものを・・・警備を強化せんといかんな。」

「・・・俺ら目当てだろう?」

「さぁな。瑞希、車庫を開けてくれ。」



真面目な顔で聞く瑞希お兄ちゃんに、獅子島さんは知らん顔で答える。

これに瑞希お兄ちゃんはため息をつくと、リモコンを取り出してスイッチを入れた。






ギー・・・ガガガガ!





「自分で開けやがれ。」

「カーチェイスで、浸水した。」



そう言って車でのすれ違いざまに、色違いのリモコンを瑞希お兄ちゃんに投げる獅子島さん。

水滴と甘いにおいで、ジュースが原因で水没したと気づく。



(しかも、私が頼んだ飲み物だ・・・)



怖いな・・・後で弁償しろって言われたらどうしよう・・・



〔★恐怖は終わらない★〕



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