さよなら、もう一人のわたし
わたしが生まれる前の話だったが、母親からそんなことを聞いたこともある。
「でも次から次に新しい子が出てくるからね。そんなに長い間覚えている人もそこまで多くない。だからあまり気にしないで」
彼女は肩をすくめてそう微笑んだ。
彼女は分厚いアルバムを取り出すと、床の上に置いた。そして一枚のページを捲る。そこには少し古ぼけた写真があって、そこには顔立ちの整った女性と、目がぱっちりとした赤ん坊の姿があった。
「これは?」
「お母さんの赤ちゃんの頃の写真。でもこの辺りはいまいちかな」
千春はアルバムを捲る。そこに写っていたのは二十歳くらいのまっすぐな瞳で前方を見つめている女性の姿だった。
それはわたしの知っている「彼女」の姿でもあった。
「不思議な気分。めちゃくちゃ綺麗な人だよね」
「そうかな」
千春は複雑そうな顔でその写真を見ていた。
この頃の彼女は二十歳くらいの頃だ。千春と確かによく似ている。
言われるまでなぜ分からなかったのだろう。
「わたしがあなたに声をかけたのはわたしのためなのよ」
「どういうこと?」
わたしは首をかしげて千春を見た。
「でも次から次に新しい子が出てくるからね。そんなに長い間覚えている人もそこまで多くない。だからあまり気にしないで」
彼女は肩をすくめてそう微笑んだ。
彼女は分厚いアルバムを取り出すと、床の上に置いた。そして一枚のページを捲る。そこには少し古ぼけた写真があって、そこには顔立ちの整った女性と、目がぱっちりとした赤ん坊の姿があった。
「これは?」
「お母さんの赤ちゃんの頃の写真。でもこの辺りはいまいちかな」
千春はアルバムを捲る。そこに写っていたのは二十歳くらいのまっすぐな瞳で前方を見つめている女性の姿だった。
それはわたしの知っている「彼女」の姿でもあった。
「不思議な気分。めちゃくちゃ綺麗な人だよね」
「そうかな」
千春は複雑そうな顔でその写真を見ていた。
この頃の彼女は二十歳くらいの頃だ。千春と確かによく似ている。
言われるまでなぜ分からなかったのだろう。
「わたしがあなたに声をかけたのはわたしのためなのよ」
「どういうこと?」
わたしは首をかしげて千春を見た。