大切な人へ

まだ少し教室にも人が残っていた。

私はなるべく目立ちたくなくて
足早に教室から出ていった…



「ごめんね?」

名前も知らない彼の優しい言葉に首をふる

何も言えないまま彼のあとを着いていく…


着いたのは学食の横にあるベンチ。
今日はやっていなくて人もいない。



「急にごめん。友達大丈夫だった?」

『大丈夫だよ』

普通な感じで話してくれて、少し落ち着き
返事ができた



並んで座る距離が近く感じる…


視界に入る彼の膝が少しこちらを向いた。



「俺のことわかる?」

その言葉に顔を上げるとまっすぐ私を見てた


ワックスで整えられた髪と
二重の綺麗な瞳にすっと通った鼻筋

派手な印象はないけど
清潔感がただよっている


かっこいいんだけど…
やっぱり思い出せなかった



急な質問に戸惑っていると


「やっぱりかぁ 笑」

『ごめんっ…どこで会った?』

私が申し訳なく聞くと
いいよと笑顔で話してくれた



彼はクラス委員会議で去年から私を
見かけていたそうだ

去年と今年の体育祭でも近くで
作業をしていたらしい…しかも隣のクラス



私は普段 男の子とあまり話さないし
目も合わせず、出来るだけ避けてきた…


何度か会っていたらしい彼にも
同じ様にしていたのだろう



だから今、普通に話すことができる井川くんと上田くんは すごく久しぶりにできた男友達だった



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