大切な人へ
ハプニング

静寂が2人を包む

彼が横ですっと腕をあげて

「終わったかな…」


終わっちゃった
それほど大きくない規模で約1時間
せっかくこんな場所で2人きりだったのに…


横で立ち上がった先生のシャツをとっさに掴む



『もう少し…
一緒に居たい まだ帰りたくない』




「……え?」


動揺しか汲み取れない先生の表情にはっとする
私…なに言ってるのっ!


『あっ…えっと…』

パニックで言葉がつまる



『また、夏休みも…
時間あれば勉強みてもらえませんか?』


やっと出てきた言葉に悲しくなった

そうだ…私が先生に会える理由って
これしかないんだよね…



「いいよ」

そう言った彼はいつもの様に笑った



また外の階段を2人で降りて
外への扉が閉められる

現実に戻っていく感覚が寂しい





私の頭の中は 前を歩く彼のことで一杯だった

コツコツと響く2人の足音


やっぱり好きだよ

まだ一緒にいたい

夏休みなんていらないのに__



そんな事ばかり考えて
いつもより早いペースに気がつかなかった





足元から視線をあげるとグラッと視界が歪む__



気持ち悪っ…

ふらふらしながら
右手で手すりを探していると




フワ…



体が浮くような感覚




え⁉ 落ちる…‼






バサッ_______




「__っ‼」





< 54 / 192 >

この作品をシェア

pagetop