大切な人へ


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『先生の気持ち...
嬉しすぎて外で叫びたくなるくらい嬉しい!』

赤い顔で本当に嬉しそうに笑う彼女を見て

俺もつられて笑ってしまう


顔を洗いたいと手洗い場に走っていく
彼女の後ろ姿を見て考える...


本当の気持ちを伝えるのは
やっぱり良くなかったよな...

良くないに決まっているのに
俺は言ってしまったんだ

彼女を悲しませることしかできない自分が
不甲斐なかった...




俺はこれからどうするつもりなんだろう

君に何がしてあげられるんだろう


君に想われる嬉しさ
傷つける不安

入り交じる感情がぐるぐる頭に巡る




それから公園を少し散歩して帰路につく


『ねえ先生?私にドキドキしてくれたことって
あったんですか?』

車の中での嬉しそうな君を見ると
嬉しいけど切ない


「うん」

『え!?いつですか?』

「秘密」

『えー!』

2人の笑い声が車内に響く



『1つだけお願い 聞いてもらえませんか?』

信号待ちで彼女の少し落ち着いた声に
そちらを向いた


『もう1回だけ...美優って呼んでほしい』


みるみる赤くなっていく彼女に素直に言った


「美優...」

赤い顔で嬉しそうに笑いお礼を言った

そんな彼女をとても愛らしいと思ってしまう



『でももう藍野さんって呼んでくださいね!
今の耳に焼き付けました!』

理由を聞くと、どこかで誰かに聞かれたら
フォローできる自信がない。と...


__藍野さんらしいな
冷静でしっかり者だよね



「...そういうところだよ」

『え?』


俺なんかより他の奴の方がと
ずっと考えていたはずなのに...

俺もそばに居たいと思ってる
この時間が続けばと願ってしまう

ずっとこのまま彼女の横にいられたら...


そう思う事は許されないんだろうか





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