大切な人へ

「俺が?なんで俺まで」

ジュースを飲んでため息をついて
片方の眉をゆがめてた


『違うの?ずっとそう思ってた。
紗羅は可愛いし、2人共好きなのかなって』

そう言うと井川くんは呆れた様に笑った


でもまたこちらを向いた彼は
優しい顔で私を見て

「ま~美人だとは思う。
俺はお前の方が美人だと思うけど」





『は...い?』


急な展開に頭がついてこない




彼はゆっくり視線をそらして前をむいた

私もそれに合わせて前を向く



「お前さ1年の時からモテただろ。
お前にふられたって結構聞いた」

.... 。

「終業式の日...なんで泣いてたんだ?」


急に話が変わったけど
優しい声...井川くんってこんな声だっけ?
心配してくれてるのが伝わる


ずっと1人で悩んできたことだけど
もう私は大丈夫!




『...苦しかったの』

「うん...なんで?」

『私ね...告白されるのずっとこわかった。

好きって言われても嬉しいって思う前に
断ることばっかり考えてて...

落ち込ませちゃうとか
傷つけたくないなとか』

口に出すとまたあの感覚を
思い出しそうになる


「付き合おうかなとか思わないの?」


『思えなかった。好きになってないのに。
昔それで大切な友達を悲しませたから...

好きって言ってくれたことがただ嬉しくて
付き合うとか、まだわかってなかったのに』


『私はその子が友達として大好きだった。
それ以上に見れなくて、それをそのまま伝えた。
無責任なことして傷つけたのに
その子は笑って許してくれた...

次の日からも、前みたいに話してくれたけど
ごめんって言った時の、悲しそうな顔が忘れられなくて...
結局もとの関係には戻れなかったの』


やっぱり...

彼の事を考えるとまだ苦しい...



井川くんはずっと黙って聞いてくれてた





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