ラブ パラドックス
「俺の通ってるジムに行くなら、俺はもう行かない。ウエアの相談にも、もう乗らない」

「そんな…」


すがるような瞳で、顔を上げ夏目くんを見上げる美優さん。美優さんをなるべく傷つけないようにしていた夏目くんのやさしさに、気づかないふりをしていたのか。

本当に気づいてなかったのか。


「それに俺、ウエアを一緒に選ぶなんて一言も言ってないよな」


美優さんの瞳が一瞬で変化した。怒りを含む、敵を睨みつけるような眼が私に向けられる。

「なに葉月を睨んでんだよ。こいつは関係ないだろ」


夏目くんが、サッと背中の後ろにかくまってくれる。

「言いたいことはそれだけ。今後俺に関わらないでくれ。もちろん葉月にも」


行くぞ。と促され、美優さんの隣を通り過ぎようとする夏目くんの後ろを、慌ててついていく。


「待って!」

すれ違いざまに腕を掴まれたのはわたしだった。
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