ラブ パラドックス
「葉月さん、陽くんに何を吹き込んだの?陽くんを好きなの?」


なにこのとばっちり。

手を振りほどこうとしてもほどけない。その小さな体のどこに、こんな力があるのよ!


「おい。やめろ」

伸びてきた夏目くんの手に掴まれる、わずかの差で早く解放された手首。

夏目くんに咎められ、顔を曇らせた美優さんは、涙を浮かべ、夏目くんをじっと見つめる。


「美優さん」

私が声をかけると美優さんが振り向いた。はずみで彼女の瞳から涙がこぼれおちる。


美優さんは夏目くんを好きで、振り向いてもらおうと努力したけど間違えた。

振り向いてもらいたいのに、あれこれ考えては、怖がって何も行動できない自分自身と比べてしまう。

胸が痛い。

でも。


「わたしが夏目くんを好きかなんて、美優さんに答える義務はありません。わたしが言えることは、美優さんは平成12年法律第81号のストーカー規制法及び、平成25年7月23日施行の改正ストーカー規制法について、知っておいたほうがいいと思います。では」


これ以上、間違った行動をとらないで。

その場を立ち去るとき、もう美優さんに止められることはなかった。

< 137 / 294 >

この作品をシェア

pagetop