ラブ パラドックス
「あのさあ」

ディスプレイを真剣に見て目ていたはずの夏目くんは、ひじをついて、親指の上に顎を乗せてこっちを見ていた。

「それってあれだろ?新しいスーツだよな」

「うん。早速着てきた」


どう?どう?と尋ねる私を、じっと見つめたまま無言の夏目氏。な、なによ。


「昨日スーツ取りに行って、店長と何かあった?」

「何かって?」

「電話番号聞かれたとか、今度飯行こうとか」

「交換したし、食事も行った」

「…ふーん」

夏目くんは肘をついたまま、つまらなそうに呟いた。


「自分から聞いておいてそのどうでもよさそうな返事はどうよ」

「お前土曜ひま?」

「え、話飛びすぎじゃない?」

「空いてるかって聞いてんだよ」

「いつもは予定びっしりなんだけど、なぜかたまたま空いてるかも。わー珍しい」

「小芝居すんな。暇人」

「誤解しないでよ。用事はないけどやることはあるの」


そしてまた、片ひじをついたままの体勢で、指で鼻をひと撫でして、とんでもない一言を言い放った。



「デートしようぜ」
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