僕の星
結び~永遠~
 子どもの頃、夏休み最後の夜――
 家族の誰にも告げず、ひとりで星を見に行った。

 夜の浜辺を走っていると、砂浜には花火に興じる人影が数組、あちこちに散らばっている。

 俺は待った。
 星と自分のふたりきりになるのを。

 1時間ばかり過ぎただろうか。
 花火の音も、人の話し声も遠ざかり、辺りには波の打ち寄せる音だけが響くのみとなった。

 ほとんど真っ暗な夜の中、俺は小さな懐中電灯を片手にサンダルに砂をまぶしながら、波打ち際へと向かう。途中、花火のごみやクラゲの死骸なんかもあって、ジャンプしてよけながら走った。

 ひんやりとした海水に足が浸る辺りで立ち止まる。
 肩で息をしながら、遠くに目を凝らした。

 無限に拡がる黒い海原。

 だけどそれ以上に、頭上にある天空……宇宙は、気が遠くなるほど彼方まで続いている。
 今も宇宙は膨張し続けているのだと、理科の先生が言ったのを思い出していた。

 俺は波のあとがついていない、乾いたところまで後ずさると、砂の上にごろりと寝そべり夜空と対峙した。
 あの星も俺も、同じ材料で出来ている。今の俺ならそんなことを思うだろう。
 だけど、10歳のガキにはただ、見たままの感動だけが胸にあった。

 とてつもなく美しい、と――
< 142 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop