僕の星
 東大寺は奈良時代に全国の国分寺の中心として建てられた大規模な寺である。

 奈良時代中期、疫病の流行や度重なる災害などで人々は苦しみ、国は乱れきっていた。仏教を信仰していた聖武天皇は仏の力で世の中が安定し、人々が救済されることを願い、743年大仏造立の詔を出した。

 大仏は749年に完成し、3年後の752年には世界最大の木造建築物である東大寺大仏殿にて開眼供養が営まれた。

 東大寺自体が、戦火や自然災害で多くの建物が失われてきたが、金堂本尊盧舎那仏坐像も頭部が落ちたりあちこち壊れたりで、補修が繰り返し行われている。台座の一部など、当時作られた部分はわずかに残るばかりである。

 里奈は3年ぶりに、その大仏様を見上げた。

 そして、春彦と出会えた感謝の意味をこめて手を合わせる。修学旅行の時はうっかりお参りを忘れてしまったのにゲンキンなものだが、その分心をこめてお参りをした。

「あの時はもっと混んでたし、ゆっくり見ることができなかったな」

 里奈は大仏の周りをぐるりとまわりながら、隣にいる春彦に話しかけた。

「里奈はさ、あの眼鏡の子……城崎さんだっけ? あの子と四天王を眺めてたろ」
「あ、そうそう……ってあれ、あの時から見てたの?」
「う、うん」

 春彦はばつが悪そうに返事すると、表に出ようと言って出口に向かった。
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