僕の星
「わあ……」

 180度が、360度になった感覚――

 果てしなく拡がる宇宙の中に銀河系があり、太陽系があり、そして地球がある。
 海と大地。それから、たくさんの生き物。
 自分達も小さく存在している。

 波の音を聞きながら、里奈は目を閉じた。
 2人は黙ったまま、じっとして動かない。どれぐらいそうしていただろうか。
 春彦の声が聞こえてきた。

「宿命の星を、俺は見つけたよ」
「え?」
「10歳の時、まったく分からなかった星を、俺は見つけた」

 里奈は目を開き、春彦に顔を向ける。

「どこに……どこにあるの? 今、見える?」
「見える見える。見えるどころか手が届くよ」

 春彦は笑うと、里奈を片手で引き寄せる。半身を起こし、上に覆いかぶさってきた。

「ここにいる。俺は17の秋に見つけたんだ。大勢の中で、ただひとりの宿命の星を。探さなくても見えたんだ、あの時」
「……」
「僕の星が……」

 満天の星を背に、春彦がキスを落とす。

 燃えるような愛情に抱かれ、里奈の頬をひとすじの涙が伝った。
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