僕の星
『はっきり言って、三田君だってそんなマジメじゃないからね。だからこそ、よっぽどワルだと思うのよ、その滝口(たきぐち)君って子は……』
「滝口君?」
『あっ』

 律子が、しまったという声を上げた。

「あの子、滝口君って言うんだ」
『あー、もう。駄目だよ里奈。関わっちゃ駄目って、ホントに言われてるんだからね!』

 この狼狽ぶりは、どうやら本気で止めている。
 里奈は残念に思ったが、でも、何か納得がいかない。

 あの男の子……滝口と言う名の彼を思い出してみるが、そんなワルには見えなかった。
 もう少し詳しく聞きたいと思う。

「素行不良で停学って、一体何をやらかしたの、その……滝口君は」

 律子は迷ったように口ごもるが、やがて大きく息をついた。

『暴力だって』
「ええっ?」
『小さい頃から武道を習ってるとかで、やたらとケンカばっかりしてるんだって。それで1年の時に、ついに相手に大怪我をさせるような暴力をふるって、停学処分になったらしいよ』
「あの子が……」

 聞けば聞くほど意外である。
 骨太で運動神経は良さそうだと思ったが、その能力がケンカに使われているとは意外だった。
 しかも、相手に大怪我をさせたと聞いて里奈は膝が震えそうになる。

 そこまで荒くれ者なのか――と。
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