僕の星
『あんな子と関わったら大変だよ! 忘れちゃったほうがいいって』

 段々興奮してきたのか、律子の声は大きくなり、里奈はスマホを遠ざける。

「う、うん、分かった。いろいろ調べてくれてありがとうね、りっちゃん」

 全身から力が抜けるのを感じた。
 修学旅行の帰りのバスから今まで、正直言って、眠れないぐらいワクワクしていた。

 あの男の子の姿を忘れないように、食事中も入浴中も、ずっと頭に思い浮かべていた。
 お守り袋も大事にして、肌身離さず持っているのに。

(ああ……私、バカみたい)

 里奈は、こういうのも失恋と呼ぶのだろうかと考える。
 確かに今、恐ろしく虚しい。
 これが喪失感と言うものならば、やはり失恋かもしれない。

 たった五日間足らずの恋だった。
 そう、この気持ちは恋なのだと、自覚したばかりなのに。

『で、……から伝言があるの。あとでPCメール確認してね!』

 里奈は廊下に突っ立ったまま、律子が何か言うのを上の空で聞いていた。


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