僕の星
 久しぶりに観た映画は面白く、里奈の沈んだ気持ちを立て直してくれた。
 アクションコメディは、歴史ものの次に好きなジャンルである。

 滝口君のことを、ゆかりに話すべきかどうか迷っていた。
 でも、どうにか大丈夫。
 ぜんぶ喋って忘れてしまおう。


 映画館から歩いて5分のファミレスで、里奈とゆかりは遅い昼食をとった。

 里奈はラーメンセットを食べ終えると、律子から聞いたことを、ゆかりに話して聞かせた。

「へえ~、そうなの。そんな子だったの」

 ゆかりは眼鏡をはずし、うどんの湯気で曇ったレンズを、ハンカチで拭きながら言った。

「うん。なんだか拍子抜けしちゃった」

 里奈はあ~あと、ため息をついた。

「そっかあ……男の子に興味が持てるチャンスだったのにね」

 ゆかりの言葉に、里奈はドキリとする。

 そうなのだ。
 里奈は自分がまだ、男の子に対して恋の感情を持てることを発見し、驚いている。


 二人はファミレスを出て、通りをぶらぶらと歩いた。
 平日のためか人通りも少なく、街は妙に静かだ。

 月曜日の午後。
 降り続く雨の音だけが二人を包んでいる。
< 20 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop