僕の星

春になれ!

 春彦と再会した日から、里奈は彼とスマートフォンでメール交換している。

(といっても、ほとんど私が一方的に送ってる状態だけど)

 メールに関して、春彦は無精者だ。里奈が質問したことに対しては簡単に答えるが、近況などには返信をくれない。分かったとも、了解とも、何も反応が無いので、始めは不安になったものだ。

 ちょっぴり物足りないけれど、春彦の無骨な様子を思い出すと「無理ないかも……」と、里奈はあきらめつつある。



 長いような短いような夏休みが過ぎて、2学期が始まった。

 体育館での始業式のあと、教室へ帰る途中で里奈は後ろから腕を掴まれた。びっくりして振り向くと、清川律子が生真面目な顔で立っていた。

「りっちゃん……」
「今日、一緒に帰ろ。東門のところで待ってるから」

 里奈の返事を聞かず、走り去ってしまった。

(夏休みのことだ……)

 あの日、三田や進太に対する里奈の態度は失礼だった。そのことを責められるのだと、すぐに思い至る。
 学校が始まったばかりだというのに、いきなり友人関係に悩まされるとは。
 里奈は憂鬱になり、ため息をついた。

「りっちゃんと何かあったの?」

 とぼとぼ歩き出すと、ゆかりが声をかけてきた。近くで様子を見ていたらしい。

「うん。実はね、夏休みに……」

 里奈は、夏休みのできごとをかいつまんで話した。
 もちろん、滝口春彦と再会したことも。
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