僕の星
「お待たせ」
春彦が戻って来て、里奈の顔をひょいと覗きこんだ。
「何、考えてたんだ?」
一人で笑う里奈に、からかうように訊く。いつもの春彦だった。
「ううん、なーんにも。お土産買ったの?」
「ああ。親父がスマホカバーがあれば送ってくれって言うから、それだけ買った」
「そっか。自分のは?」
「俺は卒業するまで何度か来るだろうし、今日はやめておいたよ」
「ふうん」
そうだった。春彦は大学にいる間、名古屋に住む。
城好きの彼のことだから、名古屋城にちょくちょく通うだろう。
(でも、ということは……)
春彦がいずれ千葉に帰るということに、里奈は思い至る。本人が希望するとおり、就職先は関東になるだろう。
二人が傍にいられるのは、あと3年半――期限付きなのだ。
春彦は里奈の隣に腰かけると、名古屋城の天守閣を仰ぎ見た。抜けるような青空に、白い城壁が映えている。
「本物の天守閣は戦争で燃えちゃったんだよな。酷い話だ」
春彦は残念そうにつぶやくと、ため息をついた。
春彦が戻って来て、里奈の顔をひょいと覗きこんだ。
「何、考えてたんだ?」
一人で笑う里奈に、からかうように訊く。いつもの春彦だった。
「ううん、なーんにも。お土産買ったの?」
「ああ。親父がスマホカバーがあれば送ってくれって言うから、それだけ買った」
「そっか。自分のは?」
「俺は卒業するまで何度か来るだろうし、今日はやめておいたよ」
「ふうん」
そうだった。春彦は大学にいる間、名古屋に住む。
城好きの彼のことだから、名古屋城にちょくちょく通うだろう。
(でも、ということは……)
春彦がいずれ千葉に帰るということに、里奈は思い至る。本人が希望するとおり、就職先は関東になるだろう。
二人が傍にいられるのは、あと3年半――期限付きなのだ。
春彦は里奈の隣に腰かけると、名古屋城の天守閣を仰ぎ見た。抜けるような青空に、白い城壁が映えている。
「本物の天守閣は戦争で燃えちゃったんだよな。酷い話だ」
春彦は残念そうにつぶやくと、ため息をついた。