僕の星
森村家
バスに乗り、名古屋駅に着くまで二人は黙っていた。
明るい駅構内に入ると初めて向き合い、互いに照れ笑いする。春彦は憑き物が落ちたように、穏やかな顔だった。里奈はようやく安心することができた。
「家まで送るよ」
「ううん、ここで大丈夫。駅からの道は明るいし、危なくないから」
「いや、送って行く。里奈の家も見てみたいし」
時間は午後8時を過ぎている。春彦は先に立って改札を通った。
電車のシートに座ると、春彦は大学の仲間達についてあらためて話した。
「俺と山本が工学部の機械工学科で、中西と竹内が応用化学科。あと、吉田が国際学部のコミュニケーション学科だな」
「吉田さんって、下の名前は何ていうの?」
「直子、よしだなおこ。素直じゃないくせに直子だ」
楽しげに話す春彦を見上げ、里奈はクスッと笑う。
「何だよ」
「もう怒ってないの?」
さっきはあんなに睨み合ってたくせにと、可笑しくなった。
「吉田とはいつもこうだよ。カーッとケンカしてすぐに元通り。ホント疲れるよ、あいつには」
「似た者同士だったりして?」
「そうだな。どっちも負けず嫌いだし。でも、今日はやたらとしつこかったよ、吉田のやつ」
明るい駅構内に入ると初めて向き合い、互いに照れ笑いする。春彦は憑き物が落ちたように、穏やかな顔だった。里奈はようやく安心することができた。
「家まで送るよ」
「ううん、ここで大丈夫。駅からの道は明るいし、危なくないから」
「いや、送って行く。里奈の家も見てみたいし」
時間は午後8時を過ぎている。春彦は先に立って改札を通った。
電車のシートに座ると、春彦は大学の仲間達についてあらためて話した。
「俺と山本が工学部の機械工学科で、中西と竹内が応用化学科。あと、吉田が国際学部のコミュニケーション学科だな」
「吉田さんって、下の名前は何ていうの?」
「直子、よしだなおこ。素直じゃないくせに直子だ」
楽しげに話す春彦を見上げ、里奈はクスッと笑う。
「何だよ」
「もう怒ってないの?」
さっきはあんなに睨み合ってたくせにと、可笑しくなった。
「吉田とはいつもこうだよ。カーッとケンカしてすぐに元通り。ホント疲れるよ、あいつには」
「似た者同士だったりして?」
「そうだな。どっちも負けず嫌いだし。でも、今日はやたらとしつこかったよ、吉田のやつ」