僕の星
 里奈は春彦が見せてくれた写真を思い浮かべた。合宿の休み時間に昼寝する彼の姿を、直子はスマートフォンで写し、わざわざアプリで送っている。

 あの寝顔は――春彦に言うと怒るかもしれないけれど――子どもみたいで、可愛かった。
 里奈は直子の気持ちが分かる気がした。

「直子さんは、春彦のことを……」

 言いかけて、口をつぐむ。春彦も黙って、聞こえないふりをしている。
 知っているのかもしれない。彼女の想いを。

 やがて電車は、駅のホームに滑り込む。二人はその話題は置き去りにして、電車を降りた。



 駅から森村家までは、自転車で5分の距離。
 里奈は自転車置き場から自転車を出すと、荷台を指して春彦に言った。

「後ろに乗る?」
「バカ、俺が漕ぐよ」

 ハンドルを奪われた里奈は、それならよろしくとばかりに、荷台にひょいとまたがった。
 春彦は天を仰ぐと「色気なし」と、小さく呟く。

「何か言った?」
「なあ~んにも」

 春彦はクスクス笑っている。

(今度のデートは、スカートにしようかな)

 里奈はそんなことを思いつつ、振り落とされないようサドルにしっかり掴まった。
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