虚無たちの葬失




「犯人がわかったところで……意味はない。でも、もし俺らが能動的ニヒリストだっていうなら、凪紗が殺された意味を見出さなきゃいけないんじゃないのかと、ふと思ったんだ」




教室に無音が浮かび、沈黙は流れるように五人の間をすり抜ける。



澄んだ窓ガラスの向こうからは、太陽ような笑い声が幾重にも重なって響いてくる。



笑い声がふいと途絶えた時、和真が場に似つかわしくない明るい笑みをこぼした。




「ははっ、まあ良いんじゃないの。たまには意味のねえことしても」




純也を除く四人が口元を弓なりに歪める。



遥が教卓の中に置かれていた白いチョークを手に取り、深緑の黒板に向き合った。




「じゃあどこから考える?警察が調べたはずだから、私たちに解けるかわからないけど」

「考えるのは良いとしても、犯人を見つけるのは無理だと思うよ。僕はね」

「それでも良いんだ」




誠の声を肯定し、純也は寂しげに笑った。




「全部に意味がないはずなのに……なんでだろうな。一人で少しずつ考えるうち、凪紗の死には、何かしらの意味があるような気がしたんだ」

「なによ、それ」




端麗な顔を綻ばせ、教卓上に腰を下ろしたまま美緒は本を膝の上に置いた。




「わからないのに考えるの?」

「ま、遥もいるし大丈夫だって!」

「えっ……」




和真の屈託のない表情に戸惑いながらも遥はぎこちなく口角を上げ、純也を見た。




「じゃあまずは、整理からだな」




――教室にかかる時計の針は、午後五時半を指し示している。



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