下村係長と同期の榎本くんの、シェア彼女…!?
───ドンッ


「す、すいませんっ」


ぶつかった人に頭を下げて通り過ぎようとすると、掴まれた手。


「加奈ちゃん、見っけ」


「え、榎本くんっ」


「庶務行ったら今日は珍しく早く上がったって言われて。探してたんだ。相変わらずうっかりさんだね?」


「あ、うん…」


「慌てて人にぶつかるのもうっかりだし、ボクの告白スルーっていうのも、うっかり?」


…そうだった。


わたし、朝からあまりの事の順調さに、榎本くんの告白、忘れてた…。


「飲み、行かない?てゆーか、断らせないけど」


「わたし、あんまり飲めないし…」


「行こ?」


榎本くんはやんわりな拒否を受け取ってはくれず、手を繋いだまま歩いてく。


電車を使って銀座まで出て、榎本くんがくぐったのはわたしにはちょっと敷居の高い老舗の洋食屋さん。


案内された席で榎本くんはメニューをオーダー、わたしの前にはすぐに赤ワインが置かれた。


「ボクがやっと加奈ちゃんに告白できたお祝い。カンパイ」


「うん…。カン、パイ…」


───カチン


グラスを鳴らし、せっかくだから一杯と思って口をつけると、口いっぱいに香り豊かなぶどうの味が広がった。


「フルーティーで飲みやすいワインでしょ?」


「うん。おいし…」


「飲んでよ。ここ、肉料理もおいしいよ?」


「あの、ね…榎本くんっ」


「まずは落ち着いて飲も?話は後で、ねっ?」


「うん…」


甘いマスクのあんなに恋しく想ってた榎本くんが目の前、しかも2人きりでっ。


どうしよう…。


榎本くんの告白の返事とか、そんなこと考えられないくらい、心臓バクバクする…。


お料理はなかなか来なくて、ワインばかりが胃の中へ消費されていく。


もともとたくさん飲めないわたし、早くも酔い気味。
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