死神さん


「あっもうこんな時間・・・ユキくん帰ろうよ」

「ん??・・・あぁそうだな」
・・・もうそんな時間か
読んでいた本を元の位置に片付け、机の上に散乱した菓子類を片付ける。ちなみにこれはナナ持参だ。
・・・以外とこいつは不良委員長なのかもしれない
部室の鍵を締め、外履きを履き外に出る

校舎からでてグラウンドをみわたす
グラウンドからはまだ生徒の声がした

「サッカー部まだ練習してるな・・・」

「そうだね、もうとっくに下校時刻過ぎてるのに」

「気合いはいってるなぁーーー」

「今年はなにやらすごいらしいよ」

「そうか・・・それは邪魔しちゃ悪いな」

「・・・・・・・・・先帰るか」

「うん・・・そうだね」

夕暮れ時、帰り道いつもの下校路を歩く
昔よく遊びに行くのにつかった道だ驚きも何も無い
昔珍しかった赤ポストも、高かったように感じた民家の土手も、いまとなってはなんてことは無いし、興味ももてない、ただの道だ


「・・・あっそうだナナに借りてた本。読み終わったから返すよ」

「本当!?どう?面白かった?」

「あーおもしろかったぜ・・・後半の怒涛の急展開が意外すぎた」

「でしょ!!でしょぉー!!」
「あれはね明治時代に活躍した小説家で当時の小説としてありえないぐらい未来を予知しててね、でね・・・」
・・・ナナがぴょんぴょんはねる
本当に本が好きなんだなぁー
・・・俺はこうはぜったいなれないなぁーと思う

「ちょっと家の前で待っててすぐとってくるから」

早足で玄関に向かう
・・・・・・・・・おっとっといかんいかんわすれとった
少し戻り、庭の中の花壇の前に向かう

「ヤスハル」とかいた立付けの前で俺は止まり両手を合わせて、目をつぶる
家に出入りする前いつもこうしてる
俺の家族であり・・・親友だった・・・
ヤスハルとの思い出はいまもずっと心の中にのこっている
・・・でもお前にとっての思い出はどこにいくのだろうか??

あいつは本当に土にかえってしまったのだろうか



目を開けると隣でナナも祈っていた

「なんかわるいな・・・付き合わせてしまって」・・・少し照れて頭をかく

「そんなことないよ・・・ヤスハルはわたしにとっても友達だもん」

「あぁーあいつお前がくるといつも飛びついてたもんなぁ〜 」

「初めてお前が家に来た日なんか逃げるおまえを追いかけ回して、そのせいで大声で泣くわ、トイレにこもるわでおまえ大変だったなあー」

「その話はやめて!!!」
・・・顔を真赤にして叫ぶナナ

「うはははははははは〜」
おれはそのときのことを思い出し爆笑する


「ねぇ・・・ユキくん大丈夫?」
ナナが心配そうな目でこちらをみてきた

「ん?たんこぶがか ??」

「ううん・・・最近ずっと元気ないから」
・・・ん??そうか?自覚症状がないな

「そんなことないさ」

なにかを察したのかナナは話を続けた

「たぶんねヤスハルも空から見守ってくれてると思うんだ・・・」

・・・・・・本当にそうおもってる?
そう言いかけてやめた
ひどく不謹慎だし、多分きっと言っても考えても意味の無いことだ。
でもなんだろう俺はどうしてもそうはおもえない・・・おもえないんだ

「そうだな」
俯きながら返事をする

「・・・・・・ちょっと本とってくるわ」

「うん」

ナナから逃げるように早足で去った・・・


玄関を開けて
靴を脱ぎすて、部屋に向かう

部屋の前に着き、一旦立ち止まる・・・
ヤスハルがいた頃は俺が 家に帰ってくるとなぜか部屋の机の上で必ずあいつは寝てた
そしてエサの時間までずっと起きなかった・・・おいっおまえいつまで居るんだよってかんじで
しもしない勉強をよくヤスハルのせいにしてた
毎日、ヤスハルがいない部屋が自分の知ってる場所じゃないような気がしてひどく寂しくなる
なぁヤスハル俺・・・勉強しなきゃいけなくなっちまったじゃねぇか
・・・ぜんぜん割り切れてない自分がいたあぁこんなんじゃナナにも心配されるわけだ

そうこうはしてられない、外でナナがまってる・・・

落ちこんだ気持ちを抑えゆっくりとドアを開ける






















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