ただ、たまらなく


ケイタの家から駅までは徒歩10分。

果たしてこの10分は長いのだろうか、短いのだろうか。

なんて最近は思いながらこの道を歩く。


「ナツメ」


改札を通る手前。

珍しくケイタが私の手をひいた。


「ん?」


振り返っても口を開かないケイタ。

相変わらずなにを考えているのか分からない目をしている。


「どうしたの?」

「...気を付けて帰れよ」


そう言って私の手を離した。

そのために手をつかんだの?

もう電車はホームに着いている。

よくわからないケイタの行動にもやもやしながら電車に乗り込んだ。

ケータイにイヤホンを差し、お気に入りの曲を聴く。

目を閉じるのと共にさっきのケイタの姿も消す。


少し傷ついたような顔のケイタを。


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