君は世界を旅してる


「いちじょうみお?」

「うん4組の」

一条くんの秘密を知った次の日、改めて千尋に尋ねてみた。
名前とクラスを言えばピンときたのか、千尋があっと声をあげた。

「知ってる知ってる。あの暗い人でしょ」

「あ、そうかも」

「1年のとき同じクラスだったよ」

もうすぐ朝のHRが始まる時間だ。
千尋が机の上を片付けるのを見て、自分も慌ててそれに習った。

「けど、ほとんど喋ったことないかも。友達いなかったんじゃないかなー」

「そうなの?」

確かに、明るくて社交的なタイプではなさそうだと思っていたけど、口は悪いながらもこちらが話しかけたら返してくれるし、顔もすごく綺麗で整っている印象だった。
友達が出来ないような人には見えなかったから、少し意外だ。

「うーん、なんていうか、自分から1人になりたがってるような。あえて友達つくらないような感じだった気がする」

「なにそれ」

「みんな、一条のこと嫌いってわけじゃないんだよ。だけどこう、寄せ付けないオーラっていうの?それ察したら近付きにくいでしょ、普通」

ますます不思議な人だ。
そんなことして何になるのだろう。
あの"秘密"がばれないように?そんなことしなくても、普通に生活してるだけじゃ絶対ばれないと思うのだけど。

「一条がどうしたの?昨日言ってた人も一条のことなんでしょー?」

ニヤニヤした顔でそう聞いてくる千尋は、どこか面白がっているように見える。
だけど正直に話すわけにもいかなくて言い訳を探す。

「別に、ちょっと話す機会あったから、どんな人か気になっただけだよ」

……嘘ではない。
いまいち納得出来ないといった表情の千尋は、先生が教室に入って来たのを見て詮索するのを諦めたようだった。

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