火恋 ~ひれん~
笹原町の公園通りは人っ子一人いない風情で、当然、普通なら年末の特別番組や恒例の紅白歌合戦をテレビで観ながら家族で年越し蕎麦を食べている頃だろう。提灯の灯りが少し物寂しく見えた。
「・・・らっしゃい」
相変わらずぶっきらぼうに迎えられ、却って馴染み客の気分にもなる。
「こんばんわ」
軽くお辞儀をすると、ゆっくりしてけ、と返事が返った。
「・・・峰さん、そろそろ河岸を変えちゃどうですか。うちのシマとは言え、ここいらは外れてますから・・・」
「気が向いたらな」
手を動かしながら、峰さんは渉さんとそんな会話を交わしていた。
この間は緊張もしていたし味わえる余裕すら無かった。今日は出汁の薫りだとか、麺の茹で上がりの匂いだとかが鼻の奥をふわりと抜けていく。
「あの時はろくに味も憶えて無いだろう、お前」
渉さんがクスリと笑ってこっちを見た。
「それはだって、相・・・渉さんと何を話していいかも分からなくて・・・」
「お互い様だ。・・・どうして織江を連れて来る気になったんだかな。俺も焼きが回った」
いつになく饒舌で。彼がとても自然体で話を・・・ううん、お喋りをしている。
「確かに相澤には勿体ない嬢ちゃんだ」
ボソッと横から口を出した峰さんに、「俺もそう思ってますよ」と事も無げに答えて。
「何だ、惚れてるのか」
その問いに渉さんは一瞬遠い目をした。ように見えた。
そして薄く笑む。
「・・・・・・大事にしますよ、これから」
「・・・らっしゃい」
相変わらずぶっきらぼうに迎えられ、却って馴染み客の気分にもなる。
「こんばんわ」
軽くお辞儀をすると、ゆっくりしてけ、と返事が返った。
「・・・峰さん、そろそろ河岸を変えちゃどうですか。うちのシマとは言え、ここいらは外れてますから・・・」
「気が向いたらな」
手を動かしながら、峰さんは渉さんとそんな会話を交わしていた。
この間は緊張もしていたし味わえる余裕すら無かった。今日は出汁の薫りだとか、麺の茹で上がりの匂いだとかが鼻の奥をふわりと抜けていく。
「あの時はろくに味も憶えて無いだろう、お前」
渉さんがクスリと笑ってこっちを見た。
「それはだって、相・・・渉さんと何を話していいかも分からなくて・・・」
「お互い様だ。・・・どうして織江を連れて来る気になったんだかな。俺も焼きが回った」
いつになく饒舌で。彼がとても自然体で話を・・・ううん、お喋りをしている。
「確かに相澤には勿体ない嬢ちゃんだ」
ボソッと横から口を出した峰さんに、「俺もそう思ってますよ」と事も無げに答えて。
「何だ、惚れてるのか」
その問いに渉さんは一瞬遠い目をした。ように見えた。
そして薄く笑む。
「・・・・・・大事にしますよ、これから」