リアルな恋は落ち着かない
マンションの前には、一台、グレーのセダン車が停まっていた。

もしかしてこれかな・・・と運転席をチラリと見ると、助手席の窓がウィーンと下がった。

「おはようございます」

「あっ・・・お、おはよう」

車の中から、五十嵐くんが私に声をかけてきた。

見慣れない眼鏡姿で、私は一瞬だけちょっとドキリとしてしまった。

「乗ってください」

「・・・うん」

彼が中から扉を開けてくれたので、私は頷き、そのまま助手席の位置に座った。

恐ろしく緊張する。

助手席って、こんなに緊張する場所だったんだ。


(五十嵐くんもいつもと違うし・・・)


無造作に整えられた髪の毛は、いつもと大差はないけれど、それでも会社のときとは何かが違うような気がした。

眼鏡姿は初めて見るから、きっと、車を運転するときだけかけるのだろう。

服装は、カジュアルでシンプルな、白いシャツにデニム姿。

もとがいいからだろうけど、それだけでやたらかっこよく見え、悔しいながらも私はとてもドキドキとして、助手席の上でカチンコチンに固まっていた。


(その点では、五十嵐くんはいつもと全く変わらないよね・・・)


相変わらず、五十嵐くんは落ち着いている。

やっぱり、私を冷静に観察するつもりかもしれない。

そんなことを思っていると、眼鏡の横目が向けられた。
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