リアルな恋は落ち着かない
「来ないかなって不安だったんですけど。よかったです、来てくれて」

「・・・うん・・・いちおう」


(ずいぶん悩みましたけど・・・)


「よかった」と言われると、ちょっと嬉しくなる自分がいた。

「どっか、行きたいとこってありましたか」

「ううん・・・。ごめんなさい、考えたんだけど、どこがいいかよくわからなくて」

これは正直な気持ちだった。

五十嵐くんと出かけるとして、私なりにかなり悩んだ。

本当の彼氏なら、映画や水族館や動物園にも行ってみたいと思ったけれど、五十嵐くんはそうではないし、そうではない二人で行って、楽しいかどうかもわからないから。

「いや・・・いいんです。すいません。じゃあ、オレの連れて行きたいとこでいいですか」

「うん」

「江ノ島。最近行ったりしましたか」


(江ノ島・・・)


「・・・ううん。子どもの頃、家族で行ったくらいで・・・。大人になってからは、全然」

「そうですか。じゃあ、行きましょう。久しぶりに行くと、結構楽しいですよ」

そう言うと、五十嵐くんは眼鏡を一度押し上げて、アクセルをゆっくり踏み込んだ。








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