リアルな恋は落ち着かない
「橘内さん」

午後の始業開始まもなく。

聞き慣れた声に振り向くと、柊吾がはなこちゃんと資料を持って斜め後ろに立っていた。

「ここ。後で音声認識のテストしてもらっていいですか」

「うん。わかりました」

「じゃあ・・・お願いします」

低い声でそう言うと、彼ははなこちゃんと資料を私の机の上に置く。

そして一瞬だけ優しい笑顔を見せた後、すぐにその場を立ち去った。


(・・・)


やっぱり、今日もかっこいい・・・。

背の高い後ろ姿を見送りながら、そんなことを思ってしまう。

私たちが付き合いだして、早くももう一か月。

彼は変わらず優しくて、そして変わらずかっこいい。


(もともとかっこいいのに、好きになったら余計にキラキラ見えるもの・・・)


今だに自分が彼女でいいのか、不安になる日はあるけれど。

それを毎度打ち消すように、彼は優しくしてくれる。

心の中が満たされる日々、私はとても幸せだ。









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