リアルな恋は落ち着かない
17時を過ぎても、仕事が終わる気配はなかった。

今日は金曜日。

柊吾とは、仕事が終わったら飲みに行こうと約束している。

できれば一気に片付けたいけど、疲れもピークでちょっと一息いれたくなった。


(いつもの甘いカフェラテ飲んで、気分転換しようかな)


そう思って、私は席を立ち上がる。

ちょうど通りがかった七瀬係長にひと声かけると、ロボット開発部を出て、二階にある自動販売機へと向かって行った。


(あ、誰かいる・・・)


自販機横にたどり着くと、近くの長椅子に座っている一人の男性の姿が見えた。

そのまま歩を進めると、その人物と目が合った。

「あ・・・お疲れさまです」

「ああ、橘内さん。お疲れさま」

阿部課長だった。

少し休憩していこうと思っていたけど、課長の隣に座るのは、やっぱり躊躇してしまう。

自販機でカフェラテを買うと、私は「お先に」と言って仕事に戻ろうとしたけれど。

「あれ、行っちゃうの?ここ座ったら」

「い、いえ・・・もう戻ります」

「なんで?休憩しに来たんじゃないの?」

「いえ・・・とりあえず、カフェラテを買いにだけ・・・」

「はは、警戒されてんだなー。大丈夫だよ。何もしないから」

そう言って、課長は空いている隣のスペースを、ポンポン、と叩いて促す。


(う、うーん・・・)


これで座らなかったら、警戒心がバレバレだ。

さすがに失礼な気がしてしまい、私は「じゃあ・・・」と頷いて、一人分ほどの間隔をあけ、課長の隣に腰掛けた。
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