東高★男子サッカー部~私の仕事はマスコット



「大丈夫ですか?まさか、二人で辞めちゃうなんて……驚きました」



無視されるかもしれない覚悟で話しかけた私に、キャプテンは少しだけ笑うと



「辞め辛くなったとか思ってる?」



そう、人工芝を蹴りながら聞いた。



「いえ、そんな……」



そんな事まで考えてなかったのに、キャプテンが私の気持ちをちゃんと考えてくれていて、それが少しだけ嬉しくて。



「綾ちゃんが大会までってのは変えなくていいから。人が足りなくなったらまたスカウトしてくるだけ」



「はい」



「まぁ……アイツらみたいに突然彼氏が出来ない事を祈るよ」



そう言うと腰に手を当てて、ほんの一瞬そっと髪に顔を埋めて……また私に切なさを残すハグをした。



誰もいなくなったサッカー場で、まだ行き場のない私の気持ちが風と一緒に舞い上がる。



最後の試合まであと1ヶ月。



これ以上何事もなく過ぎますように。



沢井と、今日の奈々子ちゃんの事。なかなか落ち着いてくれない周りの状況に嫌な予感が消えてくれないから……何も出来ない私はそっと祈った。



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