あなたとホワイトウェディングを夢みて

 留美の部屋の前までやって来た郁未は玄関ベルを押すが、留美がドアを開くまで待てなく、ドアノブを掴んで回した。
 鍵はかかっておらず、ガチャッと玄関ドアが開いた。

「なんて事だ。不用心にも程がある」

 万が一、見知らぬ男に部屋へ押し入られたらと、そんな事が頭を過ると、留美のあられもない姿を脳裏に浮かべる。そこへ留美が茶の間から現れると、郁未は靴を脱ぎ捨て廊下を走り留美を抱きしめた。

「……あの?」

 留美の無事な姿を見て安心した郁未は思わず怒鳴ってしまった。

「このバカ! なんで玄関に鍵をかけていない! もし変質者や強盗が入り込んだら危ないだろう!」
「……こんな貧乏な住まいなんて誰も興味ないですから」

 怒鳴られても、それは心配しての事だと判る留美は、いつもの反発する態度は取らず嬉しそうに微笑む。しかし、納得がいかない郁未は、留美を抱きしめる腕に力が入る。

「無事で良かった」

 留美の元気な姿に郁未は喜びで抱きしめる腕が震える。

「専務……」

 普通なら、女と戯れた匂いを漂わせる男など怒りをぶつけて終わりで良さそうなのに、留美にはそんな真似は出来なかった。
 服を着替えて来た郁未を追い返せない。

「そうだ、胃は、胃は大丈夫なのか?! 第一なんで聡なんかと食事に出た?! あれほど安静にしていろと言ったのに。それに、その格好はなんだ?」

 郁未が留美の両肩を掴んで身体を引き離すと問攻めにするが、元気良さそうな留美の姿を見たら、体調の心配から聡と出掛けた不満へと少しずつ変わっていく。
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