あなたとホワイトウェディングを夢みて
「俺の世界では信じられない話だが、君の世界ではお伽噺のような友情もあるということだね」
当たり前と思っている現実世界の人間関係がお伽噺と言う、郁未の世界を想像できない留美は裕福とは何なのかと考えさせられてしまう。
「同情は要らないよ」
悩ましげな表情の留美を見て郁未が苦笑する。
留美の中では『同情』という言葉はなく、ただ、住む世界や価値観の違いを思い知るだけ。だから、留美は少し頭を垂れると首を軽く横に振った。
「折角のディナーだ、美味しい食事を堪能しようじゃないか」
重苦しい雰囲気を嫌った郁未が明るく笑顔を振りまくが、それに反してダウンライト以外の照明が落とされて部屋の雰囲気が瞬時に夜の姿へと変わる。
驚いた留美が天井を見渡すと、クスッと笑った郁未が手元のリモコンを留美に掲げてみせる。
「ディナーらしい雰囲気になっただろう?」
「そんなことしてたくさんの女性を楽しませて来たの?」
悪戯っ子の笑みを浮かべ自慢げな顔の郁未にちょっとした厭味を言ってみる。いつもの郁未なら憎まれ口を叩くのに、今日は大人しく口を閉ざし戸惑いながらリモコンをテーブルの上に置いた。
ディナーの雰囲気作りをしただけの郁未に大人気ない態度を取ってしまったと、留美が『言い過ぎたわ』と小声で詫びる。すると、眉を細め苦笑する郁未が困惑気味に言う。
「俺はプレイボーイだ。女性を楽しませたいだけさ」
「私も女性の内に入っているのかしら?」
郁未が他の女性とこんな甘い雰囲気の時間を過ごしてきたのかと、それを思うだけで留美の気分はあまり優れない。すると、つい、またそんなつれないセリフを返す。
「ああ、君は素敵な女性だ。今夜はこれまでで一番素晴らしい夜になると信じているよ」
ほくそ笑む郁未。留美は今夜どんな夜を迎えるのかを思い出した。