あなたとホワイトウェディングを夢みて
(……欲求不満か……思春期じゃあるまいし……)
留美との約束もあり今すぐには抱けない。それに、処女相手にがっつく訳にも行かず年頃の男としては苦悩する。
「留美、いないのか?」
それにしても留美の部屋からは物音一つしない。高級マンションとは違い薄い壁の向こうから生活音が聞こえてきても良さそうなのに。
気になった郁未は玄関ベルをもう一度押すとドアノブをガチャガチャと回した。すると、不用心にもドアが開く。
「風呂にでも入ってるのか? 不用心だぞ。玄関の鍵は閉めなきゃ危ないだ……ろ……?」
靴を脱いだ郁未がドカドカと上がり込んで茶の間へとやって来るが、中からは人の気配も明かりもない。暗闇の世界に迷い込んだような空間に、郁未は慌てて天井から下がる照明器具の紐を手探りで引っ張る。
「まさか、もう寝たのか? 女の一人暮らしなんだ玄関開けっ放しなんて最悪だぞ。やっぱりセキュリティがしっかりした俺のところに……」
ブツブツと文句を言いながら隣り合う寝室の襖を勢いよく開けた。しかし、そこにも留美の姿はなく、開いたカーテンの窓から月明かりが差し込むだけで寂しげな空間だ。
(風呂か? ……それにしても不用心すぎるだろ。玄関の鍵はかけてないし、部屋の明かりもなし。曲がりなりにも女なんだ、もう少し自分の操の心配くらいしてくれよ)
あまりにも無防備な留美の部屋に苛ついた郁未は、乱暴に襖を閉めると浴室へと向かった。しかし、浴室にも明かりはなかった。
「嘘だろ……」
全く留美の気配を感じ取れない郁未は慌てて部屋中の扉という扉を開けて、留美の姿を探し回った。
「……ここもいないか」
トイレのドアを開けた時、流石にここまで追いかけるのは抵抗を感じたが、それでも留美の姿を探し出せないことに苛立つ。
「あいつ、何やってんだ?!」
とうとうアパートの部屋中どこにも留美の姿はなかった。
けれど玄関の鍵は開いていた、もしかしたら近所のコンビニに買い物にでも出たのかと窓の外を眺める。
「しかたない、待つか、携帯は俺が持っているしな……」