あなたとホワイトウェディングを夢みて
濡れた髪にタオルを被せ、ボクサーパンツ姿で浴室から出てきた郁未は、念の為会社へ確認の連絡を入れようと携帯電話を手にする。
リビングルームのレザーのソファーに深く腰掛け、タオルで頭をゴシゴシと拭きながら携帯電話の電話帳一覧から人事課課長を呼び出す。
「情報処理課の佐伯留美の連絡先を知りたい」
ところが予想もしない答えが返ってくる。
「本人の希望で、緊急時以外は上司であっても連絡先を教えられません」
「今は緊急時なんだ」
緊急ならばと課長のパソコンデータを確認する音が受話器から聞こえてくる。
「佐伯さんのアパートですが」
「アパートは判っている。実家の方の住所が知りたい」
「そちらの情報はありません」
課長によると、社員名簿には現住所であるアパートの情報しか記載がないと言う。緊急連絡先についても調べさせたが結果は同じだった。
留美はアパートには戻ってはおらず、連絡をしようにも肝心の携帯電話の代替え機は留美のアパートに置いたまま、留美は手にしていないだろう。
「出勤するには早いだろうから、出社していないだろうな……」
困った口調でボソッとつぶやくと、それが聞こえた課長が答えた。
「いえ、佐伯さんは本日は有給休暇を取られています」
「有給休暇?! 理由は?」
「プライベートな理由ですが」
留美との関係を公にしていない為、一個人の情報を聞き出すのは至難の業。特にプライベートに関しては雇用主以外へは徹底していた。
だが、何はともあれ、留美はどうやら無事なよう。婚約した間柄なのに、自分には一言の連絡もなく、まるで行方をくらませたようなこの状態に郁未は不満を覚える。