あなたとホワイトウェディングを夢みて

 翌朝、先に目を覚ましたのは郁未だ。窓にはシックな遮光カーテンが下がっているが、陽が昇ればカーテンは微かに明るくなる。
 そして、起床時間が近づくと、目覚まし時計に頼らずとも自然と目が覚めていく。瞼が開いた郁未はたっぷりの睡眠に、身体も頭も軽くなりスッキリとした目覚めに気分も晴れる。

「いつの間に家に帰ってきたんだ? 確か、いつものラウンジで飲んでいたと思うが…… タクシーでも拾ったのか?」

 目の前に広がる見慣れた光景、アイボリーの天井から下がるアンティークなシャンデリアを眺めながら身体を起こす。
 ホテルのラウンジで日本酒を飲んだのは記憶にある。しかし、その後の記憶は全くない。一人で帰宅したのか、誰かに迎えに来てもらったのか。曖昧な記憶でもあればと(こうべ)(めぐ)らすが、やはり最後に残るはラウンジで薦められた地酒を飲んだところだ。

「今、何曜日の何時だ?」

 ラウンジに行ったのは午後を回ってからだ。今は夕方かと考えたが、壁掛け時計の針は七時を指している。今の季節、夜の七時にこの明るさはない。

「きっと夜が明けたんだな……」

 大きな溜め息を吐きベッドから降りようと身体を横に向けると、ベッドの縁にうつ伏せになる留美がいる。
 夢か幻か、はたまた狐か狸に化かされているのかと、何度も瞬きして本物の留美なのか凝視する。
 留美を探し求め、とうとう幻想するまでに至ってしまったと郁未は恐る恐る手を差し伸べた。白いシーツに広がる留美の漆黒な髪の毛、その先端に軽く触れると毛髪の柔らかな質感が指先から伝わる。紛れもなく留美の髪だと確信した郁未は、留美の額に指先を滑らし手の平で頬の温もりを感じ取る。

「留美……。紛れもなく俺の留美だ」

 郁未の瞳が和らぎ口元が緩むと、掛け布団を剥ぎ取り、留美の両肩を掴みベッドへ引きずり上げた。胡座を組んだ自分の膝に留美を抱き上げ、眠る留美の頬に自らの頬を擦り寄せる。

「留美……。今までどこにいたんだ? 探したんだぞ」

 留美の温もりを全身で感じ取りながら、柔らかな肌をギュッと抱きしめる。
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