あなたとホワイトウェディングを夢みて
「プログラムと言うものは目にかなりの負担がかかり、相当な疲労感があるとWeb構築課の社員達も辛そうに話すからね。君が多少職務怠慢したとしても私は気にはしないよ」
致命的なミスがあると連絡を入れておきながら、遠回し的な物言いが留美は癪に障る。
「呼び出しの理由はなんでしょうか?」
相変わらず高慢な態度の留美に苛ついた郁未が、デスクの上に置いていたCDケースを手に取り、それを留美へ突き出す。
差し出されたCDを受け取るつもりで郁未のデスクへ近づこうとすると、郁未はそのCDケースを乱暴にも留美の前へと投げ捨てた。
CDケースは留美のすぐ前の床に落ち、ケースの蓋は外れ、中のCDまでもが飛び出し床に落ちてしまう。
床からケースとCDを拾った留美は、立ち上がると郁未を睨み付けて言い放つ。
「物に罪はありません。物へ当たるのは止めて下さい」
CDをケースにセットし蓋を閉じた留美は、ケースに床の小さな埃が付着しているのに気づき、それを指で振り払う。そして、透明ケースの裏側からCDそのものに傷がないことを確認し、ホッと胸を撫で下ろす。
「データの原本はお前が持っているのだろう?」
「ええ、そうです」
「提出前に動作確認を行ったのか?」
何度も動作確認をしている。そして、専務へ手渡す直前までは問題など見当たらなかったのを留美は知っている。