あなたとホワイトウェディングを夢みて
詳しい説明はないが、専務からの連絡では致命的なミスを発見したらしい。もし、それが事実であれば、専務に頭を下げなければならない。
普通なら仕事のミスを指摘されるのはたいそう苦痛だが、相手が専務だと仕事のミスより頭を下げる事の方がどれだけ屈辱的か。
あの女の敵の専務に謝罪する事は、人生に於いて最大の汚点になる、そう思うと専務室へ行く足取りが重い。
しかし、自分はプロだと言い聞かせ、専務室の前までやって来ると大きく深呼吸をし、ドアをノックする。
「どうぞ」
専務の明るい声が返ってきた。
いつもの不機嫌な声質とはかけ離れた、かなり浮かれた声に聞こえる。幻聴だろうかと思いながらドアを開け中へ入ると、真正面のデスクに郁未が椅子に深く座って留美を待っていた。気味が悪いほどに微笑みながら――
「待っていたよ」
かなり上機嫌の郁未だ。
田中の話では致命的なミスを発見したと聞かされていたのに。
イヤな予感がする留美がデスク前まで行くと、椅子に深く座った郁未が脚を組み、不敵な笑みを浮かべて留美を見た。
「先ほどのデータに何か問題がありましたでしょうか?」
「君がここで昼寝をした後もデータの確認をしていてね、疑問点を見つけたんだが」
やはりここで居眠りをしていたのだと思い知った留美だが、自分の失態だけに言い返す言葉が見つからず無言のまま郁未の厭味を聞いていた。