あなたとホワイトウェディングを夢みて
第四章 ディナーでときめいて

 得意先との会食の為に郁未にドレスアップさせられた留美は、セレブ御用達の高級ホテルへと連れて行かれた。
 そこで待ち受けていたのは得意先にしてはイケメンの戸田聡(とだ さとし)と言う男性だ。
 ホテル上層階にある会員制の展望レストラン、その中でも特に絶景の場所である一室に案内されて行った。
 スウィートルームのような一室で、北欧の王家の晩餐会を思わせる重厚感ある円形テーブルに真っ白なクロスが掛けられていて、座るのが恐れ多く感じる。
 ウェイターに椅子を引かれ、郁未も聡も当然のように自然に腰を下ろすが、一般庶民の留美は椅子に座るのも躊躇する。
 そんな高級感たっぷりのテーブルで、豪華なメンバーと向き合って食事など、今の留美には手が震えそうで喉も通りそうにない。
 それに、室内の照明が何処にでもある蛍光灯とは違い、高い天井から下がるアンティークなシャンデリアが余計に留美を緊張させる。
 暖色系の灯りが容姿の整った彼らの顔を更に色っぽく見せる。聡もイケメンで惚れ惚れする顔立ちだが、留美は郁未に惹きつけられる。
 甘いマスクだけでなく、身のこなし方も優雅で、なのに男らしくて、そこに居るだけで存在感のある郁未から目が離せない。
 すると、先程までの落ち着かない気分は何処かへと吹き飛び、今は隣に座る郁未に胸が騒がしくて、目のやり場に困っている。
 下を向いてモジモジしていると、それに気付いた郁未が手を差し伸べて、テーブル下の膝の上に置いた留美の手を包み込んだ。

「専務……」
「緊張してるのかい? 可愛いな、留美」
< 91 / 300 >

この作品をシェア

pagetop