狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
16 気持ちの在りか
ハッ…ハッ…

晩秋の朝、朝靄(もや)の中では吐き出す息さえまっ白だ。

「オオカミさ~~ん!お早うございま~~すっ」

いつもより20分も早く来たのに、例の公園のベンチには、もう大神さんが座って待っていた。

「早いじゃないか、休日だって言うのにさ」
「ええ、ちょっと早起きしちゃいまして」

隣に腰掛けた私は、早速ウエストポーチからオニギリを2つ取り出した。
片方を彼に渡すと、自分のぶんのサランラップを剥き始める。

夏の終わり頃から、ようやく学習した私は、彼に奪われる分の朝御飯を予め用意するようになっていた。

しかも、ご指摘どおりの手作りだ!

寺田さんに出会ってからの私、この美容ランニングにはますます気合いが入っている。
 

「カチョーこそ、早いじゃないですか。
ま、年寄りは早起きっていいますからねぇ…」

「お前のその1、2言多いのは何とかならないのか。
……お、何かオカズが入ってる」

「あ、分かります⁉いつもより3手間も多い、山賊ムスビなんですよ。
どうです?お味の方は」

私が目を輝かせて詰め寄ると、彼は少しだけ仰け反った。
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